コラム第37回
【専門医が解説】歯磨きがインフルエンザ予防に?
インフルエンザについて
インフルエンザが今年は大流行しています。
定点医療機関の報告では昨年の2倍を超える患者数が報告されており、警報による基準値を超えている状態です。
1月末までピークが続くそうなので、しっかりと対策をしていきたいですね。
罹患をさけるためには、手洗いやマスク着用、密を避けるなどの自己防衛が必要なのは皆さん周知だと思いますが、実は歯磨きでもインフルエンザ予防の効果があることが研究で明らかになっています。
今回は歯磨きがなぜ、インフルエンザ予防になるのかをお話させていただきます。
歯磨きがインフルエンザ予防に!
日本歯科医師会によると、東京歯科大学の研究グループの報告で、2003年に特別養護老人ホームにて行ったインフルエンザと口腔ケアの関連性についての調査結果があります。
それによると、歯科衛生士が週に一度、口腔ケアと集団口腔衛生指導を行ったグループはインフルエンザの罹患率が10分の1になったそうです。
また、そのグループの口腔内を調べたところ、口腔内の細菌数が減少し、インフルエンザウイルスの感染を助ける酵素の活性が低下し、感染が抑えられたことも判明しました。
歯磨きで予防できる理由
風邪などの細菌は粘膜に付着するだけで炎症を起こします。
しかし、インフルエンザなどのウイルスは少し異なります。インフルエンザウイルスは粘膜に付着後、細胞内に入り込むことによって感染を引き起こします。
このとき歯周病菌が多く存在している場合、ウイルスが細胞内に入り込みやすくなります。
本来、気道粘膜にはタンパク質の膜があり、ウイルスが付着しにくい構造になっていますが、歯周病菌はプロテアーゼというタンパク質を分解する酵素を出して、そのタンパク質の膜を壊してしまうからです。
よって歯磨きで歯周病菌を減らせば、ウイルスが細胞内へ侵入しにくくなるのです。
まとめ
手洗い・うがいに比べて、歯磨きによる感染対策はあまり周知されていないように思います。
寝ている間は細菌が繁殖しやすいため、就寝前はもちろん、朝起きてすぐに歯を磨くことも大切です。
つい朝食後に歯を磨きたくなりますが、朝食と一緒に繁殖した細菌やウイルスを飲み込んでしまうリスクがあります。
風邪やインフルエンザが流行ってきたかな?と思ったら、いつもより念入りに歯磨きを意識しましょう。