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コラム第32回
【専門医が解説】ただの口内炎じゃないかも?お口の粘膜の病気について

[2024.06.05]

こんな症状はありませんか?

舌・歯茎・頬などに以下の症状がある方は口腔粘膜の病気かもしれません。

・ズキズキした痛みを感じる。もしくは染みるようなヒリヒリとした痛みを感じる。

・白や赤く変色している

・水ぶくれのようになっている

・腫れやしこりを感じる

・口内炎が頻繁にできる

・ザラザラした白い筋状のものがある

・慢性的に喉に違和感がある

 

上記の症状は2週間程で治ることも多いですが、中には悪性腫瘍(がん)の可能性もあるので注意が必要です。

 

主な口腔粘膜の病気

口腔粘膜にできる病気は主に以下の症例が挙げられます。


1.アフタ口内炎

噛んだり、傷つけたりしていないのにできる、白い潰瘍の口内炎をアフタ口内炎と言います。

「口内炎」とは口腔内の粘膜の炎症全般を指す言葉ですが、いわゆる一般的に呼ばれている口内炎です。

原因ははっきりとはわかっていません。ストレスや睡眠不足、栄養不足などの疲れによる免疫力の低下、ビタミンB2欠乏などの栄養不足などが原因として考えられています。

1~2週間で自然治癒しますが、一般的にステロイド系の軟膏を塗布して症状を和らげます。

 

2.ウイルス性口内炎

ウイルスや細菌が原因で発症する口内炎です。後述するカンジタ菌に代表されます。

また、手足口病など、主にお子様に多い疾患が大人に生じることもあります。

ウイルス性口内炎の特徴は、粘膜に作られた水疱が破れて、潰瘍を生じることです。

また、発熱や強い痛みを伴うことがあります。

 


3.カンジタ菌

カンジタ菌はカビの一種で、人体の粘膜に常在していますが、免疫力の低下や、唾液量の減少、抗生物質の使用などにより過剰に増殖する場合があります。

そのため、長期の入院患者や要介護のご高齢者に多く見られます。

症状としては口の中に、こすれば取れるような白い膜や斑点が現れます。ヒリヒリとした痛みを伴う場合もあります。また、味覚障害を伴う場合もあります。

予防方法としては、口腔内や入れ歯の清掃と、乾燥を防ぐための保湿ジェルの使用やマスクの着用などが挙げられます。

入院されている患者さんなどで経口摂取が制限されている場合でも、摂取制限が口腔内の唾液量の減少に繋がるため、口腔ケアは大切です。

 

4.白板症

粘膜の表面に白色の板状また斑状の病変ができる病気です。この白斑は拭っても取れず、痛みを伴うこともありますが、基本的にはは大きな自覚症状はありません。

白板症自体は良性で心配のない病気ですが、一部は口腔がんの前癌病変とされるため、定期的な検診が推奨されます。

原因としては、喫煙やビタミンA・Bなどの栄養不足が挙げられます。

 


5.扁平苔癬

扁平苔癬は、口腔内に赤色や白色の平らな丘疹や潰瘍が現れる難治性の口内炎です。

強いかゆみを伴うことがあり、ストレスや、金属アレルギーなどの自己免疫反応が原因とされています。

また、白板症と同じく口腔がんの前癌病変である場合が2~3%ほど見受けられますので注意が必要です。

完全な治療法はありませんが、副腎皮質ホルモンを含む軟膏が有効とされています。また、ステロイドの塗布により炎症を和らげ、自然治癒を促します。

 

6.自己免疫性水疱症

自己免疫性水疱症は、体の免疫システムが誤って自分の皮膚や粘膜を攻撃することにより、水疱やびらんが生じる疾患群です。原因ははっきりと解明されていません。

代表的なものに粘膜類天疱瘡があります。

症状はしみるような痛みや出血があり、症状が悪化すると食事や歯磨きが困難になる場合もあります。

これらは慢性的かつ重篤な経過をたどることが多く、専門的な治療が必要です。連携している専門科への紹介をさせていただく場合があります。

 


7.がん腫瘍

白板症や扁平苔癬の項でもお話しましたが、口腔がんも口内炎と似た症状のため注意が必要です。

口腔がんは視認できるがん症状のはずですが、その早期発見率は低いと言われています。

理由としては、口腔がんの初期症状には痛みや出血がなく、口内炎と思い放っておくことが多いためです。

口内炎との違いは、口内炎はしこりが柔らかいのに対して、がんは硬めです。

舌がんの場合は下の中央付近にはなりにくく、歯に当たる舌の側面部分ががんになりやすいので注意が必要です。

通常の口内炎は1~2週間で自然治癒しますので、もし治らない場合は医療機関を受診しましょう。

当院では、口腔がんの疑いのある患者さんは、大学の歯科口腔外科への紹介をさせていただいております。

 


8.性感染症

近年では、性器に見られた感染症が口腔内にもみられるようになりました。

特に、感染者数が最も多いクラミジア感染症、近年爆発的に感染者が増えている梅毒、そして口内炎やカンジタ症を伴うHIV(エイズウイルス)には注意が必要です。

 

まとめ

口腔粘膜の口内炎は、1~2週間で自然治癒する場合がほとんどですが、まれに重篤な疾患の初期症状である場合があります。

ただの口内炎だと思わず、3週間以上経っても治らない場合はぜひ当院へお気軽にご相談ください。

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