コラム第5回
歯磨きの時に出血するのは病気?歯科専門医が解説
みなさん、歯ブラシで歯を磨いているときに、歯茎から出血があって心配になったことはないですか。
歯茎からの出血には様々な原因がありますが、その症状を放置することで病気が悪化してしまうこともあります。そして、その原因のほとんどは歯周病であり、実はブラッシング時の出血を気にされて歯医者を受診される方も多いのです。
歯みがきで出血するときに考える病気
1.歯周病
原因として一番多いのは何と言っても歯周病です。出血の90%は歯周病が原因となって起きているといっていいでしょう。
歯周病はお口の中に棲んでいる歯周病原菌が原因となり引き起こされる慢性的な炎症です。炎症を起こした歯肉はもろくなり、歯ブラシなどの刺激で簡単に出血してしまいます。
この歯周病には大きく分けて歯肉炎と歯周炎という病態があります。
歯肉炎
歯の周りの歯肉にのみ炎症を起こし腫れている状態です。
歯に付着する細菌の塊であるプラークが原因で生じるプラーク性歯肉炎や、妊娠中の女性がなりやすい女性ホルモンに関係した妊娠性歯肉炎などがあります。
プラーク性歯肉炎は、ブラッシングで落とせなかったプラーク(歯垢)が原因ですので、ご自身でしっかりとプラークを取り除くようにすれば治ります。歯肉の出血があった際も、ある程度しっかり歯みがきを継続すると出血しなくなっていくのは、プラークが除去されてプラーク性歯肉炎が改善するからなのですね。
通常は、炎症も歯肉だけに起きているもので歯を支えている大事な骨などには影響は見られません。重症化させないためには、早期発見が大切ですので、出血を自覚した場合は、なるべく早くかかりつけの歯医者さんに相談し、的確な診断と治療を受けることが病気を重症化させないポイントとなります。
妊娠性歯肉炎は妊娠時に分泌される女性ホルモンが影響し生じる歯肉炎で、妊婦の方に多い病気ですが、放置すると早産や低体重児の原因となる場合もありますので妊娠中でブラッシング時に出血がある場合などは、一度かかりつけの歯科医院に相談したほうが良いでしょう。
歯周炎
歯肉炎から病状が悪化して、歯肉の炎症が周りの組織に及んでしまい、歯を支える骨が溶けてしまうなどの組織破壊が起きた状態です。
〇歯肉から膿が出る
〇歯がぐらつく
〇力を入れて噛めない など
上記のような症状が出たら、赤信号!!
すぐに歯科医院で相談してくださいね。
2.その他
歯周病以外の原因として、下記のようなものが挙げられます。
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歯肉を物理的な外傷による出血(熱い食べ物を摂取しての火傷など)
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ブラッシングの力が強い場合
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症候性出血(全身の病気による出血):悪性腫瘍や白血病、糖尿病、高血圧など
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薬剤性出血:血液をサラサラにするようなお薬を服用されている方
このような出血はご自分で判断できないものも多くあります。数週間以上、歯茎からの出血が続く、または血が止まらないなどの症状がある場合にはやはり歯科医院で見てもらうとよいでしょう。
出血してしまった後からの対応とは
前述したように、ブラッシング時に出血する原因のほとんどが歯周病です。そのため歯周病を予防することが出血の予防につながります。
この歯周病を引き起こす存在が、口腔内のプラークです。しかし、適切な歯みがきを行っていれば必ず歯周病はよくなるのでしょうか?答えはノーです。
なぜかというと、そこに歯石の存在があります。
プラークが付着して、だいたい丸二日(48時間)経過すると唾液の中に含まれるカルシウムやリンなどのミネラルと結合、石灰化して歯石が作られます。この歯石は固く、歯の表面に付着すると歯ブラシでは落とせなくなってしまいます。そして、歯石の表面はごつごつしており、プラークがさらに付着しやすくなり細菌の巣となって歯周病を悪化させてしまいます。
そのため、歯石がたまった歯では、まず歯医者で歯石を除去して、歯みがきにより適切にプラークが除去できる環境を取り戻しましょう。
歯医者で歯石の除去はとても簡単!
「歯石を除去したい」「歯肉(歯周病)の状態をチェックしたい」そうおっしゃっていただければ、20分程度の簡単な処置で済みますので、皆さん全員にやっていただきたいです。
今日のまとめ
ブラッシング時の出血の予防には、歯周病を予防することが大切です。
そのために
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ご自身にあった正しいお口の清掃方法を身に着けること
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歯科医院での定期的な健診
これらが非常に効果的です。歯肉の出血をよくあることなどと軽視せずに、一度お口の専門家である歯科医院で相談することをお勧めします。