コラム第14回
歯ぎしりって悪いもの?歯周病との関連を専門医が解説①
はじめに
皆さんは「歯ぎしり」ってしたことはありますか?
睡眠中に歯ぎしりしていることを指摘された方もいると思います。その歯ぎしりや「くいしばり」は歯周病をさらに悪化させたり、治癒を妨げたりする恐れがあります。
今回は歯ぎしりの種類や対策について、歯周病との関連も併せてお話していきます。
歯ぎしり・くいしばりとは?
歯ぎしりやくいしばりは、「ブラキシズム」と呼ばれ、昼夜を問わず、無意識的に歯をこすり合わせたり、噛みしめたりする異常習癖のことを言います。ブラキシズム自体は誰にでも起こりますものですが、問題となるのはその頻度、強さ、持続時間です。
一日で歯をかみ合わせている時間は
1日のうちで、正常な上下の歯がくっついている時間が意外と短いことを皆さんはご存知ですか?
正常な方の場合は、24時間の中でわずかに20分弱程度といわれています。それ以外の時間は「安静位空隙」と言って、リラックスしている時の上下の歯の間は、2ミリくらいあいているのが適切な状態です。
そのためこの異状習癖(ブラキシズム)が続くと、徐々に歯や顎にダメージを与えます。
詰め物の頻回の脱落、歯牙破折(歯が割れること)、知覚過敏、う触(虫歯)、歯周病、顎関節症などが発生しますので、対処が必要です。
歯ぎしりやくいしばりは、いくつかのタイプに分かれます。
これから、歯やあごにダメージを与える歯ぎしりのタイプに関してお話しします。
グラインディング(歯ぎしり)
一般的にいう歯ぎしりは、専門用語で「グラインディング」と呼ばれています。
上下の歯を強くかみしめた状態で更に横に動かすことで上下の歯を擦り合わせるような咬合習癖です。ギリギリと音がするためパートナーや家族から気づかれることもあります。覚醒時よりは睡眠中に行ってしまうことが多い咬合習癖です。
原因とは
歯の早期接触や精神的なストレスが、原因にあげられます。「生理的な現象」の一つとも言えるのですが、頻度や持続時間が過剰にみられる場合は、本人・家族共に有害な影響が出る場合があり対処が必要です。
クレンチング(くいしばり)
くいしばりは、専門用語で「クレンチング」といいます。上下の歯を動かすことなく強くかみしめる咬合習癖です。
歯をこすらないため音がなく、気づかれにくい傾向がある一方で、意識的に噛む咬合力の数倍の力がかかると言われ、咬合習癖の中では最も悪化させる恐れのある習癖です。睡眠中以外にも、覚醒時の仕事や何かに集中している時などに、無意識にかみしめていることが多いと言われています。朝起きると顎がだるい、歯が浮いているような感じがするという方は、無意識のうちにこうした噛みしめをしていることが疑われます。
総入れ歯の方にこれがあると、大変難しい治療になります。
この病気を治療する前にまず大事なことは、日々の生活の中で食いしばりを自覚することです。日常生活で食いしばりをしていることに気づくことにより、食いしばりを予防することができます。
また、上下の歯を接触させていることに気付いたら、「歯を離す」ことを意識して、「はー」と息を吐くことで、力を抜きリラックス状態をつくる習慣をつけていくとよいでしょう。
タッピング(歯をカチカチ鳴らす)
上下の歯をぶつけ合って、カチカチと鳴らすような音を出すタイプの歯ぎしりです。歯ぎしりのタイプ全体で見ると少ないタイプで、歯や顎に加わるダメージは比較的少ないようです。本人に対するダメージは少ないとされますが、周囲の方が嫌がったり、そのせいで社会的に不利益を被る場合もあるのではないでしょうか。
今回のまとめ
今回は、歯ぎしりの種類や、特徴に関してお話してきました。
次回は、歯ぎしりに対する対処法・治療法、歯周病との関連もお話しする予定です。是非お待ちくださいね。