コラム第16回
歯周病と知覚過敏の関係を歯科医が説明します! ①
はじめに
歯医者で歯石クリーニングの際や、クリーニング後に歯がしみてつらかった経験された方は多いのではないかと思います。また歯がしみることに気づいて歯科医院を受診したところ、「歯周病が原因でしみていますね」と診断を受けた経験のある方も少なくないのではないでしょうか。
知覚過敏とはどのような状態なのでしょう、また、知覚過敏と歯周病の関連性に関しても、詳しくお話ししますので、是非ご覧ください。
知覚過敏ってなに?
虫歯など特定の病気がない状態で、冷たいものや歯ブラシ、固いものなどの刺激で歯がしみたり、痛みを感じたりする現象です。甘いものやすっぱいものを摂取した時に、症状を感じやすい方もいらっしゃいます。
知覚過敏について理解を深めるにあたって、まずは歯の構造についてご説明しましょう。
歯の神経は主に2層の殻によって守られています。
〇エナメル質
まず、一番表面にある「エナメル質」です。これはとても固く、丈夫で、真っ白な素材でできています。この部分は知覚がないため、虫歯や歯を削るなど刺激をしても痛みは感じません。
〇象牙質
エナメル層がなくなったときに次に現れてくるのが来るのが「象牙質」です。この部分はエナメル質に比べてやや柔らかく、刺激を神経に伝えます。これはなぜかというと、象牙質の中に走っている「象牙細管」と呼ばれる管が神経まで通じており、感覚を伝える役割を果たしているためです。その結果、象牙質まで削る治療が必要な場合には、必要に応じて麻酔をしないと強い痛みを感じてしまいます。また、この管は歯にとって大事な役割を果たす一方、細菌が侵入して炎症を起こす原因になりうるとも言われています。
つまり、上記の象牙質まで何らかの影響が及ぶと、歯の神経の信号として知覚過敏が出現するのです。
知覚過敏の原因って?
実際に、皆さまの歯の中で知覚過敏が引き起こされる原因はいくつか存在します。
〇エナメル質の摩耗
エナメル質がかみ合わせや歯ぎしりなどにより削れてしまい象牙質が露出する場合。
〇歯肉の後退
歯周病により歯ぐきが下がってしまい、歯肉の内側にある象牙質が露出してしまった場合。
〇エナメル質の破折
歯に大きな力がかかり歯の根元のエナメル質や象牙質が欠けてしまい、部分的にクサビ状の欠損が現れる場合。
〇エナメル質の亀裂
歯に大きな力が加わりエナメル質に亀裂が生じた場合。
〇虫歯(う蝕)によるエナメル質の溶解
むし歯によりエナメル質に穴が開き、象牙質が露出してしまった場合。
また、これらの症状は、象牙質が露出しているから皆さんに均一に症状を起こすとは限りません。象牙質の中の象牙細管の開口量が多い人は症状が強くでて、開口量が少ない人は比較的症状がマイルドになります。
この中でより危険なのは症状がマイルドな方です。これは病状が悪化してもなかなか自覚できないということですから、今まで知覚過敏を経験していなかったのに年を取って(特に40歳以上)知覚過敏がある方が油断せず、歯科医院に相談してみてくださいね。
歯に大きな力が加わり象牙質知覚過敏を起こす方も多くいます。
かみ合わせが強くくいしばりを日常的に行っている方や、夜間に歯ぎしりをなさっている方にも多く認められます。咬み合わせが強かったり、歯軋りを毎晩しているような方は歯に大きな力が加わるため、エナメル質にクラック(ひび割れ)が生じ、しみるような症状を自覚したりします。
歯周病からくる特殊な知覚過敏って?
上記の一般的な知覚過敏以外に特殊な知覚過敏があり、その原因は「歯周病」「歯肉炎」になります。この知覚過敏は、歯ぐきが腫れていることで、そこから直接冷水や刺激に反応してしみるような感覚を起こします。
この場合は、当法人では歯ぐきの検査を行いその痛みや症状が再現して診断を行っています。歯肉炎であれば丁寧なブラッシングを行えば10日ほどで消失すると思われます。また歯周病であっても多くの場合は適切なブラッシングとクリーニングを継続することにより、痛みを伴う治療をすることなく安定化させることが可能なことが多いです。
まとめ
今回は、知覚過敏の仕組みと原因についてお話してきました。
次回は、ここからさらに踏み込んで、知覚過敏を生じる歯周病のおススメ治療法をお話ししていきますね。