メニュー

コラム第12回
歯周病が怖い、これって遺伝するの?専門医が解説①

[2021.06.21]

はじめに

歯周病で悩まれている患者様からは「自分が歯周病だと子供にうつることはありますか?」「歯周病は遺伝しますか?」「歯周病になりやすい体質なのでしょうか?」などと質問を受けることが多くあります。親として子供に「自分と同じ思いをさせたくない」と心配されることは非常によく理解できますし、人にうつすかもしれないと心配する気持ちも非常に理解できます。

今回は、歯周病は遺伝するのか?子供にうつるのか?歯周病のかかりやすさはあるのか?をテーマにお話をさせていただきます。

 

歯周病とはなにか?

口の中には、歯周病の原因となる歯周病原細菌を含めると、500種類以上の大変多くの細菌がいるといわれています。この中の歯周病菌によって引き起こされる歯の周りの組織(歯肉・歯の表面・歯槽骨)に起こる病気が歯周病です。

 

一部の病気や薬は歯周病のリスクとなる

〇Down症候群などの一部の遺伝性の病気
〇白血病などの血液の病気
〇皮膚の病気
〇降圧剤を含めた特定の薬など

 

上記の状態にて歯ぐきを含めた歯の周りの組織に症状が出ることがあり、それが歯周病のリスク因子となります。

なぜかというと、多くの歯周病はプラークが原因であり、歯周ポケットが原因です。

歯ぐきの炎症によって深く広がった歯周ポケットがプラークをためる原因となります。

特定の病気や薬で歯周ポケットが深くなると、細菌が活動しやすくなり、炎症が他の部位(歯ぐきから歯を支えている骨などへ)にも広がってしまうのです。

 

歯周病 ← プラーク ← 歯周ポケット ← 歯周ポケットを作りやすい病気・薬

 

そのため、「歯周ポケットを作りやすい口の中の環境にしやすい病気・薬」は歯周病のリスクとなるわけです。

 

歯周病は遺伝するのか

歯周病は遺伝するのか

アンサー

歯周病そのものが遺伝するということはありません。しかし、日本人の約30%は歯周病を進行させやすい遺伝子を持っていると言われています。

 

 

慢性歯周炎は若年発症や家族性が見られる

 

歯周病の中で、病気が進行して歯を支えている骨にまで炎症が広がると「歯周炎」と呼ばれます。症状は進行しており、通常35歳未満ではあまり見られない病気です。

 

しかし、プラークがそんなに付着していないにもかかわらず、10〜30歳代で急速に病状が進行する「侵襲性歯周炎」といわれる特殊な歯周炎があります。この歯周炎は、特定の家族内に発生するという「家族内集積」という特徴と、患者様によっては、「ばい菌に対する防御機能や免疫に異常が認められる」という特徴(合併症)を伴っている場合があります。

このことから、侵襲性歯周炎である場合は、歯周病にかかりやすい体質というものが遺伝する可能性は考えられます

このように、近年は遺伝子診断により、本当に遺伝的になりやすい人、なりにくい人がいるかどうか科学的に解明されつつあるといわれています。現時点ではそれを事前に調べる検査は発明されておりませんが、このような方は歯周病の早期治療が必須!ですので、ご家族の方が歯周病で困っている場合にはぜひ歯肉のチェックにいらしてください。

 

以下にあげる疾患は、歯周病そのものが遺伝しているわけではありませんが、歯周炎を病気の一症状として伴うことがあるといわれています。(それぞれまれな疾患です)

 

歯周病を引き起こすことのある病気

〇家族性周期性好中球減少症
〇ダウン症候群
〇白血球接着能不全症候群
〇チェディアック・東症候群
〇組織球症症候群
〇小児遺伝性無顆粒球症
〇グリコーゲン代謝疾患
〇コーエン症候群 など

 

※ごくまれにですが、遺伝の関与する歯周病もあります。
〇若年性歯周炎(じゃくねんせいししゅうえん)

この病気は、全身的には健康な若年者(10歳代前半から20歳代前半)で、永久歯が生えてきた後に、部分的に急速な歯周炎が進行するもので、遺伝的な要因が関与しているといわれます。

 

まとめ

今回は、歯周病と遺伝に関して、大まかな関係性をお話ししました。

次回は引き続き、遺伝の要因に関して、Q&A方式で解説いたします。

HOME

▲ ページのトップに戻る

Close

HOME