コラム第39回
【専門医が解説】誤嚥性肺炎と歯科診療時の予防策
誤嚥性肺炎とは

誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)とは、食べ物や飲み物、だ液(つば)などが、食道ではなく気管に入ってしまい、その中にいる細菌が肺に入ることで起こる肺炎です。
私たちは普段、食べたり飲んだりするときに、食べ物が正しく食道へ進むように体が働いています。しかし、年齢を重ねたり病気の影響を受けたりすると、その働きが弱くなることがあります。
誤嚥性肺炎は高齢者に多い病気ですが、飲み込む力が弱くなっている人なら誰にでも起こる可能性があります。
なぜ起こるのか
誤嚥性肺炎が起こる主な原因は、「飲み込む力の低下」です。
例えば、次のような場合に起こりやすくなります。
- 加齢によって飲み込む力が弱くなる
- 脳梗塞などの病気の後遺症がある
- 寝たきりの生活が続いている
- 口の中が不潔で細菌が増えている
また、眠っている間に少量のだ液が気管に入ることもあります。口の中に細菌が多いと、その細菌が肺に入り、肺炎を引き起こしやすくなります。
歯科診療時における防止策

歯科診療時の対策
- イスの角度を調整して、水がとどまりやすくする。
- 吸引器で水やだ液をしっかり吸い取る。
- 治療中に患者さんに声掛けし、発声してもらう。(たんが絡んだような音がしないか)
- 半身不随などの方は、健康な側を下にして行う。
- 必要に応じて休憩を多めにとる。
患者さん自身も、苦しいときや飲み込みにくいと感じたときは、遠慮せず歯科医師やスタッフにお声がけください。
パルスオキシメーターについて
パルスオキシメーターは、指先に装着し、光を照射することで血中の酸素飽和度(SpO₂)と脈拍数を簡単に測定できる医療機器です。
酸素飽和度とは、肺から血液中のヘモグロビンへどのくらいの割合で酸素が取り込めているかの度合いです。
誤嚥性肺炎では、肺からの酸素供給が悪化するため、酸素の飽和度の低下が見られることがあります。
一般的に96~99%が標準値とされ、90%以下の場合は十分な酸素を全身の臓器に送れなくなった状態(呼吸不全)になっている可能性があるため、適切な対応が必要です。 (日本呼吸器学会より)
一般に市販されているため、個人でも使用することは可能です。
ただし、自己判断は危険です。あくまでも医師の診断を仰ぎましょう。
周囲の人が気づくためのポイント
誤嚥性肺炎は早めに気づくことが大切です。
家族や介護をする方は、次のような様子がないか確認しましょう。
- 食事中によくむせる
- 食後にせきが増える
- 声がガラガラしている
- 飲み込むのに時間がかかる
- 食欲がなくなる
- 発熱が続く
- 痰(たん)が増える
「年だからむせるのは仕方ない」と考えず、気になる症状がある場合は早めに医療機関へ相談しましょう。
リハビリ方法(お口のトレーニング)
飲み込む力を保つためには、お口やのどの筋肉を鍛えることが大切です。
パタカラ体操

「パ・タ・カ・ラ」と大きな声でゆっくり発音します。
- パ:唇の力を鍛える
- タ:舌の前の動きを鍛える
- カ:舌の奥とのどを鍛える
- ラ:舌全体の動きを鍛える
毎日続けることで、お口の動きがよくなります。
首のストレッチ
首や肩の筋肉をゆっくり動かしてほぐします。飲み込みに関係する筋肉の働きを助けます。
深呼吸
大きく息を吸って息を出す練習も、のどの筋肉を使うため効果的です。
無理をせず、自分の体調に合わせて行いましょう。
誤嚥しにくい食品と配慮
飲み込みやすい食品を選ぶことも、誤嚥の予防につながります。
比較的食べやすい食品

- ヨーグルト
- プリン
- 茶わん蒸し
- 豆腐
- とろみをつけたスープ
- やわらかく煮た野菜
- おかゆ
これらはまとまりやすく、のどを通りやすい特徴があります。
注意が必要な食品
- お茶や水などのさらさらした飲み物
- パンやカステラなど水分を吸うもの
- ナッツ類
- 海苔
- 餅
- 乾いたクッキーなどの粉製品
これらは気管に入りやすかったり、のどに残りやすかったりするため注意が必要です。
食事のときの工夫
- 背筋を伸ばして座る
- 一口を小さくする
- ゆっくり食べる
- 食べながら話しすぎない
- 食後すぐに横にならない
このような工夫を続けることで、誤嚥のリスクを減らすことができます。
まとめ
誤嚥性肺炎は、食べ物やだ液が誤って気管に入り、肺で炎症を起こす病気です。
高齢者を中心に多くみられますが、日頃の口腔ケアやお口のトレーニング、食事の工夫によって予防することができます。
家族や周囲の人も、むせやせきなどのサインに気づき、早めに対応することが大切です。
