コラム第38回
【専門医が解説】抜歯したあとの歯をそのままにしておくのはまずい?

抜歯した後の歯について
虫歯や歯周病を長期間放置したり、突発的な事故などで、歯を抜かなければならなくなることがあります。
ところが、抜歯後に「痛みもないし、そのままでも大丈夫だろう」と思って放置してしまう方が少なくありません。
歯を失ったまま放っておくと、様々なリスクを引き起こす可能性があります。
今回はそのリスクをいくつかご紹介します。
放置するリスク

歯を抜いたあとのスペースを放置してしまうと、以下のようなリスクがあります。
隣の歯が傾く・倒れてくる
抜けた部分に隣接する歯は、空いたスペースに向かって傾いたり移動したりします。
これにより歯並びや噛み合わせが悪くなり、将来的に他の歯への負担も増えます。
場合によっては矯正治療が必要となるため、費用が高額になってしまうこともあります。
噛み合わせのズレ
対合する歯(上下で噛み合っていた歯)が伸びてきてしまい、噛み合わせのバランスが崩れます。
これは通常、歯は上下の歯がお互いに噛み合うことでバランスがとられています。
このバランスが崩れると、抑えがなくなり、歯の顎の骨に埋まっている部分が少しずつ露出してしまうためです。
この露出部分は、むし歯になりやすくまた、一度露出した歯を骨の中に戻すことは非常に困難です。
顎関節への影響
噛み合わせが悪くなることで、顎の関節に負担がかかり、顎関節症になりやすくなります。
その他にも頭痛、肩こりなどの、全身の症状につながることもあります。
見た目や発音の変化
前歯・奥歯の場合は特に見た目に影響しやすく、頬がこけたりなど、顔の輪郭に表れます。
空いたスペースが気になるほか、発音にも支障をきたすことがあります。
抜歯後の治療法
抜歯後に空いたスペースを補うための代表的な治療法には、以下のような選択肢があります。
ブリッジ
両隣の歯を削って橋渡しのように人工の歯を装着します。固定式で違和感が少ない反面、健康な歯を削る必要があります。
入れ歯(義歯)
取り外し可能な人工の歯です。費用が比較的安く済む一方、違和感がある場合や、噛む力が落ちやすいというデメリットもあります。
インプラント
顎の骨に人工の歯根を埋め込み、その上に人工の歯を装着します。自分の歯のような噛み心地が得られますが、歯槽骨が正常な方でないとリスクが大きく、また外科手術が必要で、費用も高めです。
治療法の選択は、年齢やお口の状態、費用、ライフスタイルなどによって変わりますので、歯科医としっかり相談することが大切です。
もし抜歯後、長期間放置してしまったら
長期放置してしまった場合でも、治療を行うことは可能です。
しかし、長期間放置すると、通常の処置が難しくなるケースがあります。
以下のような追加処置や専門医の治療が必要になることもあります。
歯の矯正
噛み合っていた反対側の歯が大きく伸びてしまった場合、傾いた隣の歯を正しい位置に戻すために矯正が必要になることもあります。
骨造成手術
放置期間が長く骨が痩せてしまっている場合、インプラントを支える骨が不足することがあり、骨を増やす手術(GBRやサイナスリフトなど)が必要です。
治療期間は1年近くかかることもあり、治療費も30万円以上と高額になりやすいです。
まとめ
歯は、数本ない状態でも咀嚼することは可能なため、治療が更に長引くのが煩わしくて、抜歯後に放置してしまう方のお気持ちも理解できます。
しかし放置期間が長くなるほど、治療が複雑になり、費用や期間も増えてしまいます。上記のリスクは時間と共に悪化してしまうため、抜歯後はできるだけ早く処置することが大切です。
歯を1本失っただけでも、放置することでお口全体の健康に大きな影響を及ぼす可能性があります。
抜歯後は「もう治療は終わり」ではなく、「これからどう補うか」が重要です。早めに歯科医院を受診し、適切な治療法を相談しましょう。
